「マイナビニュース」カテゴリーの記事一覧
標高2800mで宇宙を見つめ、研究者を育て……東京大学・乗鞍観測所が70周年
長野県と岐阜県にまたがる乗鞍岳。北アルプスの一角としてそびえつつも、「ハイヒールでも登れる3000m級」というキャッチコピーがあるほど訪れやすい山でもあり、開山シーズン中は多数の登山客、観光客であふれる。
その山上に、「東京大学宇宙線研究所附属乗鞍観測所」(当時は東京大学宇宙線観測所)が造られたのは、いまから70年前の1953年のことだった。宇宙から降り注ぐ高エネルギーの放射線――宇宙線や、その宇宙線を利用した素粒子物理学の研究施設として、また日本で初となる全国の研究者が誰でも利用できる研究施設として活用され、戦後の日本の宇宙線研究の礎を築き、多くの成果を生み出してきた。
現在の宇宙線研究は、放射線に加え、ニュートリノや重力波といった新たな分野が主流となり、より大規模な施設や海外の施設での研究が主となっているものの、乗鞍観測所はいまなお新しい研究に活用されている。
“熱い宇宙の中を観る瞳”が復活! JAXA「X線分光撮像衛星(XRISM)」のすべて
ブラックホール、超新星残骸、銀河団――。そんな謎だらけの天体をX線で詳しく観測する使命を背負って、X線天文衛星「ひとみ」が打ち上げられたのは、いまから約7年前の2016年2月17日のことだった。
しかし、わずか1か月後に衛星に問題が発生し、そのまま復旧することなく、4月には運用を断念することになった。
志半ばで悲劇に見舞われた「ひとみ」だったが、その性能はすさまじく、運用を終えるまでに行われたわずかな時間の試験観測でも、論文誌『ネイチャー』に掲載されるほどの科学成果を生み出した。
「『ひとみ』の使命を、そしてX線天文学の火を絶やしてはならない」――。世界中の研究者の決意、期待をすべて注ぎ込み、待望のX線天文衛星が復活した。その名は「X線分光撮像衛星(XRISM、クリズム)」である。
月面着陸に再挑戦! インドの月探査機「チャンドラヤーン3」が打ち上げ成功
地球にいちばん近い天体、「月」。しかし、その地表に降り立つのは難しく、これまで数多くの探査機が、その中途半端に深い重力井戸の奥底に飲み込まれてきた。
近年宇宙開発で存在感を増しているインドもまた、その挫折を味わった。2019年8月、月の水の探索を目指した探査機「チャンドラヤーン2」を打ち上げ、着陸機「ヴィクラム」と探査車「プラギヤン」による月面着陸、探査に挑んだものの、失敗に終わった。
それから4年が経った2023年7月14日。リベンジを目指し、新たな月探査機「チャンドラヤーン3」が飛び立った。
世界初、メタンロケット打ち上げに成功 – 中国の宇宙ベンチャー「藍箭航天」
中国の宇宙ベンチャー「北京藍箭空間科技(LandSpace、藍箭航天)」は2023年7月12日、独自に開発した「朱雀二号」ロケットの打ち上げに成功した。
昨年12月14日の初打ち上げは失敗に終わっており、2回目にして初の成功となった。
朱雀二号は液化メタンと液体酸素を推進剤に使うロケットで、この組み合わせのロケットが衛星の打ち上げに成功したのは世界初であり、歴史的な快挙となった。
この世界初が、中国の、それも民間企業によって成し遂げられたことは、今後の世界の宇宙開発を占ううえで重要であり、時代の転換点となるかもしれない。
プロメテウスの火、点火! 欧州の再使用ロケットエンジンが初の燃焼試験を実施
欧州宇宙機関(ESA)とアリアングループは2023年6月23日、再使用可能なロケットエンジンの実証エンジン「プロメテウス」の初の燃焼試験に成功したと発表した。
今後も試験を重ね、再使用ロケット実証機「テミス」に装着して試験飛行を行ったのち、将来的には大型の再使用ロケットの実用化を目指す。
ダークマターとダークエネルギーの謎に挑め! 宇宙望遠鏡「ユークリッド」の挑戦
「この宇宙で最も多い元素は?」と問われたとき、多くの人は「水兵リーベ……」という歌とともに、「水素」と習ったことを思い出すかもしれない。たしかに水素はこの宇宙に最も多く存在する元素である。
しかし、これを「この宇宙で最も多い”物質”は?」という問いすると、答えが大きく変わってしまう。この宇宙では、私たちの目に見える物質、つまり元素はわずか5%程度に過ぎず、残りは「ダークマター」と「ダークエネルギー」と呼ばれる正体不明のものが占めていると考えられている。
この2つは、この宇宙の構造の形成と、加速膨張の鍵を握っていることは間違いなく、また存在することを示す証拠はあるものの、まだ誰も実際に確かめたことはなく、その正体の解明は、物理学と天文学における大きな挑戦となっている。
この謎だらけのダークマターやダークエネルギーの性質を明らかにするため、2023年7月2日、欧州宇宙機関(ESA)が開発した宇宙望遠鏡「ユークリッド」が打ち上げられた。
ヴァージンの宇宙船「スペースシップツー」が運航開始 – 初の商業飛行に成功
米宇宙企業のヴァージン・ギャラクティックは2023年6月30日、サブオービタル宇宙船「スペースシップツー」による、初の商業宇宙飛行に成功した。
これまでは自社資金による試験飛行を繰り返してきたが、今回初めて、イタリア空軍が顧客となり、運賃の支払いを受けて行われた飛行となった。
8月には一般の旅行者を乗せた飛行も予定しており、今後は毎月1回の飛行を予定するなど、宇宙飛行ビジネスを本格化させるとしている。
サブオービタル飛行をめぐっては、すでにAmazon創業者ジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジンも参入しており、いよいよこの分野における競争が本格化することになる。
精度100mの月面着陸を目指せ! JAXAの月探査機「SLIM」の技術にシビれた!
アポロ計画に代表されるように、これまで人類は、月にさまざまな探査機を送り込んできた。そしていま、有人月探査計画「アルテミス」をはじめ、月探査がふたたび活発になろうとしている。
こうした中、月の科学者は嬉しくも悩ましい課題に直面している。これまでの探査で、月面の詳細な地図ができ、「どこを調べれば科学的におもしろいのか」が詳しくわかるようになった一方で、その場所を狙って正確に着陸する術がなかったのである。
この課題を解決するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」を開発した。SLIMが目指すのは、精度100mという、従来とは桁違いの高い精度での着陸技術の実証である。さらに将来の月・惑星探査を見据え、着陸に必要な装置の軽量化も実現した。
打ち上げは2023年8月以降の予定で、それに先立つ6月4日、その機体が種子島宇宙センターで報道公開された。名前のとおりスリムな機体に秘められた、数々の最先端技術と未来の可能性をみていこう。
宇宙船「スペースシップツー」、宇宙飛行を再開 – 6月下旬から商業運航へ
米国の宇宙企業ヴァージン・ギャラクティックは2023年5月26日、サブオービタル宇宙船「スペースシップツー」の2号機「VSSユニティ」による、約2年ぶりとなる宇宙への飛行試験に成功した。
VSSユニティと発射に使う母機「VMSイヴ」は、2021年7月に飛行試験を行ったのち、問題が見つかり、改修が行われていた。
今回の成功を受け、同社では6月下旬にも、初の商業飛行を行い、運航を開始するとしている。
破産した「ヴァージン・オービット」の資産、米宇宙ベンチャー3社が落札へ
今年4月に破産した、米国の宇宙企業「ヴァージン・オービット」について、米国の宇宙ベンチャー3社に資産が売却されることがわかった。5月29日までに連邦破産裁判所が公開した文書などにより明らかになった。
ヴァージン・オービットは連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請し、オークションを通じて資産の売却手続きを進めていた。
落札したのは、超小型ロケットを運用する「ロケット・ラボ」、巨大航空機と極超音速試験機を運用する「ストラトローンチ」、宇宙ステーションやロケットエンジンなどを開発している「ヴァースト(Vast Space)」の3社で、ヴァージン・オービットが保有していた航空機や施設、設備などを切り分ける形で取得されることになった。