「Web」カテゴリーの記事一覧
インド、宇宙船の緊急脱出システムの試験に成功 – 有人宇宙飛行に向け一歩
インド宇宙研究機関(ISRO)は2023年10月21日、有人宇宙船「ガガニャーン」の緊急脱出システムの試験に成功した。
打ち上げ時に問題が置きたという想定で、飛行中のロケットから宇宙船を切り離し、無事に帰還できるかどうかが試験された。
インドは数年以内に有人宇宙飛行を行う計画で、今回の成功により実現に一歩近づいた。
H3試験機2号機特設サイト
金属でできた小惑星の謎に迫れ! NASAの探査機「サイキ」が打ち上げに成功
いまから171年前の1852年、イタリアの天文学者アンニーバレ・デ・ガスパリスは、とある大きな小惑星を発見した。彼はこの小惑星に、ギリシア神話に登場する女神にちなみ、「プシューケー(プシュケとも)」と名付けた。
その後の観測と研究で、このプシューケーは金属でできている、あるいは金属を比較的多く含む珍しい小惑星だということがわかり、地球のような惑星の中心部にある「核」が露出した状態で残っている天体だと考えられている。
そんなプシューケーに向けて、米国航空宇宙局(NASA)は2023年10月13日、探査機「サイキ(Psyche)」を打ち上げた。順調に行けば、2029年にはプシューケーに到着し、私たち人類は初めて“金属の世界”を目の当たりにすることになる。
ロシア、バイコヌール宇宙基地の「ガガーリン発射台」を資金不足で廃止か?
史上初の宇宙飛行士ユーリィ・ガガーリンが飛び立った、ロシア・バイコヌール宇宙基地の第1発射台、通称「ガガーリン発射台」について、ロシアが手放す意向を示した。
タス通信などロシア主要メディアが2023年10月14日に報じた。
同基地は、ロシアがカザフスタン政府に多額の賃料を支払い租借しており、手放すことでコスト削減を図る狙いがあるとみられる。また、ガガーリン発射台は新型ロケットの打ち上げに使うため改修が行われるはずだったが、資金難により進んでおらず、ロシアにとっては二重に負担となっていた。
ロシアはまた、カザフスタンに対してガガーリン発射台を博物館にすることも提案しているという。
ロシアの月探査機「ルナー25」の月面着陸失敗、原因はソフトウェアと結論
2023年8月に月面着陸に失敗したロシアの月探査機「ルナー25」について、国営宇宙企業ロスコスモスは10月3日、事故調査結果を発表した。
ソフトウェアの問題によって、着陸に向けた軌道変更に失敗し、墜落したと推定しているという。
ロスコスモスでは対策を施したうえで、科学成果の早期回復を目指し、2028年までに後継機を打ち上げたいとしている。
スペインの「PLDスペース」、欧州初となる民間宇宙ロケットの打ち上げを実施
スペイン発のロケット・ベンチャー企業「PLDスペース」は2023年10月7日、欧州初の民間宇宙ロケット「ミウラ1」の打ち上げを実施した。
宇宙空間には到達できなかったものの、目標としていた技術実証は果たした。
同社はミウラ1をもとに、小型衛星の打ち上げを目的とした「ミウラ5」ロケットの開発も進めており、早ければ2025年にも初打ち上げに臨む。
ついに打ち上げ! Amazonの衛星インターネット「プロジェクト・カイパー」
米Amazonは2023年10月7日、衛星インターネット・システム「プロジェクト・カイパー」の試作衛星2機の打ち上げに成功した。
地球のまわりに3000機を超える衛星を打ち上げ、全世界にブロードバンドを送り届けることを目的としたもので、今回の試作衛星による技術実証を経て、2024年末から初期サービスを開始するとしている。
衛星インターネットをめぐっては、イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXが「スターリンク」を運用し、すでに世界中にサービスを提供しているほか、米国内をはじめ世界各国で開発が活発になっている。Amazonの参入により、今後この分野での競争がさらに活発になりそうだ。
小惑星「ベンヌ」のかけらが地球に、「オサイリス・レックス」は新たな旅へ
太陽系をまわる小惑星のひとつ「ベンヌ」。太陽系の起源と生命の誕生にまつわる手がかりを秘めているかもしれない、そしていつかは地球に衝突するかもしれないこの天体に、米国航空宇宙局(NASA)の探査機「オサイリス・レックス」が舞い降りたのは、いまから3年前の2020年10月21日のことだった。
オサイリス・レックスはベンヌの地表から岩石を採取し、カプセルに詰め込んだ。そして2023年9月24日、そのカプセルを地球に送り届けることに成功した。これから地上の装置を使い、詳しい分析が始まることになる。
一方、オサイリス・レックスは「オサイリス・エーペックス」と名を変え、新たなミッションに向けて、地球をふたたび後にした。
標高2800mで宇宙を見つめ、研究者を育て……東京大学・乗鞍観測所が70周年
長野県と岐阜県にまたがる乗鞍岳。北アルプスの一角としてそびえつつも、「ハイヒールでも登れる3000m級」というキャッチコピーがあるほど訪れやすい山でもあり、開山シーズン中は多数の登山客、観光客であふれる。
その山上に、「東京大学宇宙線研究所附属乗鞍観測所」(当時は東京大学宇宙線観測所)が造られたのは、いまから70年前の1953年のことだった。宇宙から降り注ぐ高エネルギーの放射線――宇宙線や、その宇宙線を利用した素粒子物理学の研究施設として、また日本で初となる全国の研究者が誰でも利用できる研究施設として活用され、戦後の日本の宇宙線研究の礎を築き、多くの成果を生み出してきた。
現在の宇宙線研究は、放射線に加え、ニュートリノや重力波といった新たな分野が主流となり、より大規模な施設や海外の施設での研究が主となっているものの、乗鞍観測所はいまなお新しい研究に活用されている。
“熱い宇宙の中を観る瞳”が復活! JAXA「X線分光撮像衛星(XRISM)」のすべて
ブラックホール、超新星残骸、銀河団――。そんな謎だらけの天体をX線で詳しく観測する使命を背負って、X線天文衛星「ひとみ」が打ち上げられたのは、いまから約7年前の2016年2月17日のことだった。
しかし、わずか1か月後に衛星に問題が発生し、そのまま復旧することなく、4月には運用を断念することになった。
志半ばで悲劇に見舞われた「ひとみ」だったが、その性能はすさまじく、運用を終えるまでに行われたわずかな時間の試験観測でも、論文誌『ネイチャー』に掲載されるほどの科学成果を生み出した。
「『ひとみ』の使命を、そしてX線天文学の火を絶やしてはならない」――。世界中の研究者の決意、期待をすべて注ぎ込み、待望のX線天文衛星が復活した。その名は「X線分光撮像衛星(XRISM、クリズム)」である。